【HMV&BOOKS】「スタッフが自分の好きを叫べる環境を整える」CDショップの激戦区渋谷でHMV&BOOKSの店長が考える店舗マネジメント
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当コラムは、グループ社員の皆様に“ローソングループで働く仲間の仕事への想いを知ってもらうことを目的に、ローソングループで働く8人の社員にスポットをあてた企画です。普段顔を合わせることはない、けれど同じグループの仲間たち。彼ら、彼女たちは、普段どのような仕事をどんな想いで取り組んでいるのでしょうか。
今回お話を聞いたのは、CDのみならず、本、DVD、グッズの販売、ミュージアム、ポップアップストア、店内でのイベント開催など幅広くエンタメ・カルチャーを発信し続けるHMV。情熱を持ったお客様が多い業界だからこそ、販売だけでなく「来るだけで楽しい場所」として様々なサービスを展開しチャレンジをつづけています。
今回は、CDショップの激戦区渋谷の店舗「HMV&BOOKS SHIBUYA」統括店長を務める目黒亮さんに、旗艦店として戦うための店舗マネジメントについてお聞きしました。
株式会社ローソンエンタテインメント エンタメコンテンツグループ 店舗事業本部 複合店事業部 HMV&BOOKS SHIBUYA 統括店長 ※インタビュー当時
目黒亮(めぐろ りょう)
2006年入社。東京をはじめ各地域での店長やエリア責任者を経験後、2019年より書籍を中心にCD・DVDなども販売する複合店舗であり旗艦店でもある「HMV&BOOKS SHIBUYA」の統括店長に着任。現在は本社で複合店舗をはじめ店舗全般の管理や事業サポート業務を行う。
スタッフには好きにやってもらっています
ー普段のお仕事内容を教えてください。
HMVの旗艦店であるHMV&BOOKS SHIBUYAで、統括店長をやっています。
具体的な仕事内容は、基本的な店舗運営ですね。数値管理から商品展開の管理、イベントの進捗管理、細かいところだと勤怠管理も見ています。あとは、ミュージアムをはじめとする展示やポップアップストア、店内でのイベント開催も多いので本社やメーカーさんとの打ち合わせ、スタッフ約40人のマネジメントなど事務作業が中心です。基本的にはいつも店舗にいます。身動きが取れなくなってしまうのでレジには入りませんが、1日に何度かお店全体をぐるっとまわるようにはしています。
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ー目黒さんはこれまで、店長として5店舗を担当されてきたと聞きました。マネジメント面で、旗艦店ならではの違いなどはありましたか。
そうですね、ここまでの大型・大所帯の店舗ははじめてなので最初は戸惑うことも多かったです。もちろん他店舗にも共通して言えることですが、その中でも渋谷で働いているスタッフたちは特に音楽や映画、本などエンタメカルチャーへの熱量が高く、渋谷で働くことへの志を持っている人間が多いです。バイトスタッフを含め、とにかく全員エンタメカルチャーが好き。
だからこそ、マネジメント視点でみても僕から「あれしてほしい、これしてほしい」ではなく、この渋谷で「好きなことをやってほしい」という気持ちの方が強いです。
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ースタッフさん達に好きなことをやってもらいつつ、売上を担保するためにはどのような工夫をされていますか。
スタッフには思い切りやってほしいので、それができる環境を整えるようにしています。
コミュニケーション面でいうと、営業中は一人ひとりと個別に話す時間はないので、スタッフの帰り際に意識して声をかけるようにしています。普段からフランクに話せる関係性をつくっておくことで、やりたいことを遠慮せずに言える環境をつくっています。あとは、店長として個々の頑張りをしっかり見ていることを伝えることで、スタッフのモチベーションと責任感を育てたいなと。些細なことですがこの声掛けはどんなに忙しくても大事にしています。
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コミュニケーション以外でいうと、毎日店舗全体を見て回っているのですが、長期間商品展開やポップが変わらない場所がないかはチェックしていますね。商品展開を楽しみに遊びに来てくれるお客様も多くいらっしゃるので、いつ来ても”新しい好き”が見つかるテーマパークのような場所でありたいなと思っています。
店長として大事にしているのは、スタッフ全員が「自分の好きを叫べる環境」を用意すること
ーポップや商品展開についてアドバイスをすることもあるんですか?
アドバイスは多少です。よっぽどのことがない限り、展開には口出ししないようにしているんです。レイアウトは現場に立っているスタッフの方がわかっているので、信頼して任せています。
先程、渋谷は情熱やこだわりが強いスタッフが多いといいましたが、もちろんお客様もそうなんです。付け焼き刃の知識でつくった当たり障りのない展開では何も伝わらないんですよね。
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だからこそ僕が余計な口を出さずに、その商品に思い入れのあるスタッフが想いをストレートにぶつけたほうがお客様にも響くんですよね。買ってもらうための展開ではなく、愛を叫びお客様と共有するための商品展開です。スタッフが個性を出したことによりお店の味ができ、話題も呼びます。
そこの情熱は信頼しているので、僕はその上で売上につながるのかを見守るだけです。
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僕もアメコミが大好きでこの業界に飛び込んだので、気持ちがよく分かるんです。何も知らない店長からの横やりが一番萎えるじゃないですか(笑)好きに勝るパワーはないので、あえて口出しはしません。スタッフの情熱とお客様の情熱が混じり合う瞬間が一番大事ですから、店長としては信頼して任せること、そしてその熱を全力で出せるような環境を用意することが僕の仕事だと思っています。
本当に皆の熱には負けてられないなと、日々思いますね。
大事なのは売ることではなく「好きが深まる体験」を用意すること
ーHMV&BOOKS SHIBUYAならではの取り組みや、コンセプトを教えてください。
一番は”体験型”の店舗になっていることでしょうか。渋谷という土地柄、熱量の高いお客様が多いのでその熱に応えるために、アーティストの衣装展示やイベントなど「HMV&BOOKS SHIBUYA」ならではのエンタメ体験を常に用意しています。
前回の話にも出ましたが、スタッフが情熱を注ぐ「ポップ」もそのうちのひとつです。実際にそのジャンルにはまっているスタッフがポップ上で思い切り愛を叫ぶことで、それを見たお客様は「わかる!私もめっちゃ好き!!!」というように、同じ熱量の友人と話しているような感覚になれるんです。このように買っていただくことを目的としたいわゆる販促ではなく、趣味を熱量高く楽しむための「体験」をしてもらうことを大事にしています。
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ー昨年、店舗リニューアルをされたとお聞きしました。
これまではフロア内で他のテナントさんと同居している状態でしたが、渋谷モディ(※HMV&BOOKS SHIBUYAがテナントを構える商業施設)の5、6階の2フロアすべてがHMV&BOOKS SHIBUYAとなりました。フロアが広くなった分、ステージ常設のイベントスペースやポップアップショップスペースが拡充され、「体験型店舗」としての機能がよりパワーアップしました。
ーレイアウトで工夫した点を教えて下さい。
K-POPコーナーでは、エスカレーターで降りてきた際、目の前にミュージックビデオ等が流れる大画面が現れるようにプロジェクターを配置しました。まるでライブに来たかのようにテンションの上がる体験動線を組むことで、以前よりも笑顔でエスカレーターから降りてくるお客さまが増えました。見ているこちらも嬉しくなります。
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ー他にも、書籍コーナーにコスメがあったり配置がおもしろいなと。
書籍コーナーで美容系雑誌を見ているお客さまの目的って、本を買うことではなく美しくなることですよね。だから美容書籍の近くにはコスメを置くし、健康系書籍の近くには健康器具を置く。「このコーナーに立ち寄る人は、本当は何を求めているのか」を考えて、かゆいところに手が届く配置を心がけています。
あとは「このアーティストが好きなら、このアーティストも刺さりそう」など、さりげなくレコメンドする他のアーティストの商品も近くに配置しています。オンラインショッピングではなく、店舗に足を運ぶ一番の良さって“目移り”できることだと思うんです。色々なポップをみたり、その世界観に触れたり、ジャケットが気になって新しいアーティストや本に出会えたり。
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好きなものに囲まれているだけでテンションが上がったり心が満たされることってあるじゃないですか。だからこそHMV&BOOKS SHIBUYAは買い物の用事はないけどちょっと寄りたくなるような、いつ訪れても新しい発見がある場所であり続けたいなと思っています。
オンラインが主流になるほど見直される、店舗の価値
ーお話を伺う中で繰り返し「現場・店舗」というワードが出てくるのが印象的でした。
目黒さん、CD・DVD・書籍を販売する“場所”として「良い店舗の条件」とは。
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店舗ならではの体験ができることです。今は、SNS等で情報を収集し、音楽も映画もオンラインでも完結するじゃないですか。だからこそ、わざわざ店舗に足を運んでいただいたメリットをご提供したいなと思っています。
具体的にいえば、的確で気持ちの良い接客もそうですし、お客様の動線に配慮したポップや商品展開、アーティストのパネルや衣装の展示もそう。もちろん豊富な品揃えも大事ですが、それよりも「体験」に力を入れています。
もうひとつはスタッフが楽しく働ける場所であること。エンタメを取り扱っている以上、まずはスタッフに楽しんでもらいたいので、社員やバイトなど形態に関わらずすべてのスタッフがやりがいを感じられるような仕組みづくりを大切にしています。
ーなぜそこまで店舗にこだわるのでしょうか。
僕が店舗が好きだから、につきますね(笑)。
現在入社16年目になるのですが、入社当時はまだCDがたくさん売れていた時代でした。当時のHMVの印象は音楽の発信地でありエンタメの中心でした。そこからほどなくしてオンラインが主流になり、SNSが生まれ配信サービスができ…そんな頃に店長へ昇格しました。そこから十数年、初めこそ焦りはありましたが、最近はオンラインの勢いのかたわらで入社当時に感じていた「現場力・店舗力」も感じています。あの頃と変わらず、今でもHMVスタッフがカルチャーを作り出しているのを肌で感じ、オンラインにはないリアルの店舗ならではの価値が見直されてきているのかなと。
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ーその中で光る「HMVの強み」を教えてください。
HMV&BOOKS SHIBUYAでいうと、熱量をもったスタッフがつくる販売スペースや広い催事スペースがあることです。店内でのイベントだけでなく、衣装展やアートの原画展の開催やポップアップショップ、ここでしか見られない特大サイズパネルの導入、スタッフによるポップなど、店舗に来ていただかないと味わえない迫力や熱量を感じていただけます。ここ数年でCDやDVDを購入するだけの目的から、リアルの店舗ならではの体験ができる場所として足を運んでいただく機会が増えたように思います。
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実は、こちらからオファーすることもありますが、アーティストや事務所側から「HMV&BOOKS SHIBUYA でイベントをやりたい」とお声掛けいただく機会も多いんです。お客様のエンタメ体験に寄り添うことと同時に、アーティスト側からも“エンタメ体験を提供する場”として広がる様に可能な限りオファーを受ける体制を整えています。アーティストの方に「HMVがあったからこんなイベントができた」「ブレイクするきっかけとなった」と言っていただけたら嬉しいですね。
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会社としての強みは、とにかくチャレンジができること、発言しやすい雰囲気があることです。
流れの早いエンタメ業界の中で、「こんなフロアを作りたい」「こんな動線を取り入れたい」「こんなパネルを入れたい」など現場の声をスピード感を持って吸い上げてもらえることや、店舗裁量の幅が広いことはHMVの組織としての強みだと思います。
グループ会社での連携で言うと、ローソンに設置されているLoppiでHMVの取り扱うCDや書籍を注文できたり、HMV&BOOKS onlineで注文した商品をローソン店舗で受け取ることができたりすることも強みの一つではないでしょうか。他にもローソングループ限定商品を作ったりと、グループ内の連携によって新たなサービスやエンタメが生まれるのはローソングループならではだと思います。
「ここに来れば、何か新しい発見がある」そんなお店を目指して、これからもエンタメ業界を盛り上げていきたいです。