社長メッセージ

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マチの幸せを支えるのが私たちの役割
確かな使命感と責任感のもと、コロナ後の成長を目指します

代表取締役 社長竹増 貞信

これからのコンビニエンスストアのあり方に挑み続けるローソン

 コンビニエンスストアという業態が日本に生まれてすでに45年を超えました。この間、さまざまな社会的ニーズに応じてその役割は多様化し、今では単に買い物をする場ではなく、マチのインフラとして、人々の暮らしになくてはならないものとなっています。

 私たちローソンも、グループ理念である「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」の具現化を目指し、1975年の1号店オープン以来、社会環境の変化に常に鋭敏に対応し続けてきました。2019年度からは新ローソン宣言として「マチのほっとステーション」を新・企業スローガンに掲げ、お客さまはもちろん、フランチャイズ(FC)加盟店(以下、加盟店)オーナーや店舗クルー、お店を取り巻く地域のすべての皆さまにとって「ほっ」と心和む場を構築すべく取り組みを進めてまいりました。

 2019年度は、コンビニエンスストアチェーンのあり方が大きく注目を浴びた1年でした。生産年齢人口の減少による働き手不足や人件費の上昇が続き、そこから24時間営業の是非も問われました。またドミナント戦略等による競争の激化も大きな問題として浮上しました。2020年2月に発表された経済産業省による「新たなコンビニのあり方検討会」の報告書では、新たな時代に対応したビジネスモデルの再構築が提言されています。

 ローソンではかねてより加盟店支援強化、商品力強化、売場力強化、新店舗強化に力を注ぎ、加盟店オーナーや店舗クルー、私たちローソン本部も含めたみんなが幸せになれるよう、次世代コンビニエンスストアモデルの構築に邁進してきました。なかでも最前線の現場である加盟店との親密で忌憚のない対話を目指したコミュニケーションチャネルの強化は、着実な成果へと結びついています。

 また、ローソンは従来からドミナント戦略を採らず、本当に必要とされるマチに出店し、他チェーンに先駆けて全都道府県を網羅すると共に、加盟店オーナーの複数店経営化に力を入れてきました。当初から24時間営業以外の時短パッケージも設けており、2019年2月末時点で40店舗だった時短営業店舗数は、2020年3月1日時点で204店舗となりました。また、正月休業の実験を全国102店舗で実施、夜間無人化も2店舗で実験しました。

新型コロナウイルス収束後もローソンの取り組みは強みに

 そして2020年初頭から国内外の経 済を揺るがす大きな環境変化が生じま した。新型コロナウイルス感染症の世 界的蔓延です。

 人々が暮らすマチのピンチに際し 真っ先に行動し、そして最後の最後まで 支えることは、私たちの最大のミッショ ンです。緊急事態宣言下もマチの需要 に応えて店舗を開け続けるため、まず は感染防止の徹底に取り組みました。 レジカウンターにはいち早くビニール シートを設置し、来店時間分散のご案 内、店内換気の徹底、アルコール消毒 液の設置などの対策を講じるとともに、 セルフレジ利用可能店舗、スマートフォ ンで簡単に決済ができるローソンスマ ホレジ導入店舗の拡大に取り組み、皆 さまに安心してお買い物いただける環境を整えていきました。

 学校の休校で給食がなくなったこと を受け、社員の手で全国の学童保育施 設におにぎりを配布しました。すぐにお 取引先や加盟店からもお手伝いしたい という声が上がり、本当にありがたいこ とでした。私もお届けに伺いましたが、 子どもたちの明るく元気な声に、私たち 自身も幸せな気持ちをいただきました。 また、販売機会を失った農産物のローソ ン店頭での販売、学校給食が無くなった ことで需要の急減した牛乳の消費拡大 を目指したキャンペーン、フードバンク へのローソンオリジナル商品の寄贈を 増やすなど独自の取り組みを進めたほ か、全国の病院内にある約320店舗の ホスピタルローソンでは、医療従事者へ の感謝と支援の日を設けました。

 外出自粛によって人々の移動は減り、購買動向も変わりました。都市部の消費は落ち込み、昼間人口が増えた住宅地ではスーパーやコンビニエンスストアに向かう人々が増えました。ローソンではお弁当など食品需要が減少した都心部のお店においては、廃棄ロスを抑え、人件費、水道光熱費、家賃などの固定費低減に徹底的に取り組むほか、売り上げが急激に減少した個店への資金的支援も進めています。一方、住宅地ではお店でひと手間かけた「まちかど厨房」の味がこれまで以上に好評です。また、プチ贅沢品や健康的な商品へのニーズは、ナチュラルローソンや成城石井、日常的な食品や生鮮品をお手頃な価格でというニーズにはローソンストア100でお応えしています。

 住宅地でもオフィス街や郊外でも、マチに寄り添うお店として今必要なものが不足なく揃っているということは私たちの大きな強みだと感じます。滞在が長くなりがちなスーパーマーケットに比べ、ローソンではお客さまの店内滞在時間は平均約3分です。お住まいや職場の近くで、必要な商品を短時間で購入できる安心な場です。気分転換がてらに来店されるお客さまも多かったようです。どのお店でも今も、マスク越しであっても笑顔やアイコンタクトを通し“ほっ”と感じていただくことを大切にしています。

 いわゆる“巣ごもり需要”への対応も進めました。お弁当や冷凍食品、牛乳、卵、調味料などの日常品のほか、自粛ストレスを癒やすスイーツなども強化しました。また2019年8月にコンビニエンスストアとしては初の提携としてスタートした「Uber Eats」との取り組みは、本年8月には1,000店舗を超える規模に拡大しました。食品と併せて日用品や雑誌などもお届けしています。

 コロナ禍が一定の収束を見た後も人々の生活スタイルは変わっていくはずです。人と人の密な接触は控えられ、在宅でのリモートワークも常態化していくでしょう。アフターコロナに定着するであろう「新しい日常」においては、社会の変化に素早く取り組んできたローソンの対応力を生かして乗り切ることこそが、一層の需要創出を実現するチャンスと捉えています。私たちはこれまで、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など幾多の困難に直面する中、できることを最速で考え、行動してきました。今回も同様に、それぞれのマチで今求められていることは何か、そこを見極め、1店1店のお店を大切に、変化に即応できるように支援していきます。

「ローソンWAY」の浸透によりすべての小売業の中で勝ち抜きます

 私たち本部と加盟店は共に安定と成長を目指すファミリーだと思います。しかしコンビニエンスストア業界を取り巻く状況の厳しさは否めません。慢性的な働き手不足や経費の増加、売り上げの伸び悩みなどによる加盟店の“利益不足”は、働きがいを低下させ、将来への不安につながっていきます。では本部はどうするべきか?

 目指すべきは、加盟店1店1店を大事にし、コロナ後の「新しい日常」においてV字回復を図ることです。コンビニエンスストア業界内での戦いではなく、スーパーマーケットやドラッグストアなどを含めたあらゆる小売業の中で勝ち抜きます。私はこれを決して不可能なことだとは思いません。生鮮品スーパーが日用品を売り、ドラッグストアが食品を売るというように業態が変化している中、ローソン独自の価値を創り、日々の生活に必要不可欠な存在になることで実現できると考えています。

 その上での2020年度の基本方針は、“加盟店利益の向上”と“すべてのお客さまレコメンドNo.1”です。加盟店の利益に本部社員全員がこだわり、責任をもつということです。これらの方針には、私たちローソン本部がこれまでにない強い使命と責任感を感じているという背景があります。

 そして、加盟店と本部社員すべての働きがいを醸成し、これからのコンビニエンスストアとしてのあり方を求めるべく、本年3月に掲げたのが、ローソングループ全体にまたがる新たな行動指針「ローソンWAY」です。

 「ローソンWAY」の5項目の内容はシンプルなものです。けれどもシンプルだからこそ本質に近づくものだと思っています。「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」というグループ理念のもと、誠実に仕事をし、1店1店が“マチのほっとステーション”を目指していくことで、私たち自身も幸せになれます。マチも自分たちも幸せになるにはどういう行動をしていくべきか。その基本となる言葉を明示したのが「ローソンWAY」です。

 「ローソンWAY」ではさらに、本部社員、加盟店オーナーや店舗クルーなど、店舗に関わるすべての人に向けた役割と行動指針も示しています。これも「マチの姿・変化を捉え、お客さまに必要とされるお店をつくります」「いつもきれいなお店でお客さまをお迎えします」など、シンプルでわかりやすい内容です。これからのコンビニエンスストアに真に求められるものは何なのか、マチの皆さまに寄り添う姿勢に改めて立ち返り、より洗練させていくことが、次の時代に向けた着実な成長につながる戦略となります。マチに笑顔をもたらす身近なお店。欲しいものを買いに行って、ふと心触れあえる場所。災害時にも人々の暮らしを支える社会基盤。そうした「マチになくてはならない場」としての存在価値は、この「ローソンWAY」の浸透とともに、想像できないほどに大きなものになっていくでしょう。

最大のパートナーである加盟店、それぞれの課題に向き合います

 お店の利益向上のためには、これまでも注力してきました加盟店支援の一層の強化を図ります。

 加盟店利益の向上のためには本部でしかできないことは多々あります。中でも長期的な視点で取り組んでいるのが個店ごとの課題解決です。お店の立地条件や客層はそれぞれに違います。全国一律の指導ではなく、個々のお店に徹底的に寄り添い、一つひとつの課題を解決していく形を徹底します。加盟店を支える本部社員は“縁の下の力持ち”であり続けなければ、加盟店と本部との共存共栄はあり得ません。

 また、単店経営のオーナーを支援しつつ複数店経営化をサポートする新たな支援制度も設けました。新規出店での契約マッチングや店長育成サポートなども行っています。現在は約45%を占めるようになった複数店経営のオーナーがより拡大していくよう支援します。

 昨年度から掲げている「3つの約束」は不可欠なものとして変わらず力を入れていきます。

 約束の1番目は「圧倒的な美味しさ」です。昨年度に大ヒットした「バスチー」や「金しゃりおにぎり」をはじめ、美味しさで注目される商品開発は私たちローソンの得意とするところです。美味しさとは、食品だけのことではありません。品揃え、品質、サービスなどすべてをお客さまにとって価値のあるものにしていくということです。2番目の「人への優しさ」では、働くお母さんや単身者に便利なように夕夜間の品揃えを強化しています。また食塩や化学調味料不使用の食品、無添加の化粧品なども発売しました。3番目の「地球(マチ)への優しさ」とは、オリジナル商品の紙パッケージ化などのプラスチック削減への取り組みや食品ロス削減、CO2排出量削減などの環境保全活動を進めるとともに、社会的インフラの提供により地域社会との共生を図る取り組みです。

 こうした取り組みの中で内側からの変化も生まれてきました。例えば本部での新商品開発です。アイデアの実現まで複雑だったプロセスを省き、社長直結のチームをつくりました。この方法で大成功したのが「マチノパン」シリーズ。これを機に本部にも大いに活気が増しました。開発のリードタイムも減り、確かな手応えを感じています。コンビニのコアユーザーでもある若い社員たちの発想は、今年度からの「ローソンWAY」の実践を通し、一層の大きな力になることでしょう。

本部社員や加盟店すべての人々の働きがいを醸成するために

 働きがいとは何でしょうか。

 労働に対して適正なベネフィットが与えられることは基本と思いますが、それだけではありません。

 そこに、多くの人々に利すると感じられるような社会的価値があること、そして、働きやすい環境であることが大切です。これは個々人の心の持ち方に頼るのではなく、企業としてしっかりと対応すべき部分です。

 ローソン本部では、ビジネスチャットツールを導入したほか、社内文書閲覧も可能な携帯端末を貸与してリモートワークに対応しています。

 店舗の業務のデジタル化は早くから取り組んできたことです。今では個店の立地や日々の販売状況に応じて何をどれくらい入荷するとよいかが誰にでもわかります。タブレット端末や、外国人クルーにも使いやすい多言語対応の自動釣銭機付POSレジを全店舗に配備しました。働く人の負担を軽減するセルフレジやローソンスマホレジは、会計時に人との接触が少ないことからコロナ禍において一層の意味をもつようになりました。働く側、お客さま側の双方が安心できる環境の確保は、私たちが誠意を持って確実に守っていかなければならない使命です。人の温かみをほっと感じるおもてなしスキルと、働く人を支えるデジタル技術の融合は、私たちの長年の得意分野ともいえます。

 それらのきめ細やかな対策の上で、加盟店、本部の誰もが安心して日々の仕事に取り組み、その結果としての果実を、多くのステークホルダーと将来的にも共有しあえること。そうした長期の視点こそが、関わる一人ひとりにとっての“現在の働きがい”を醸成していくのではないでしょうか。

次世代への配慮と多様性の重視が持続的成長のカギ

 私たちは日本を代表するコンビニエンスストアチェーンの使命として、SDGs実現への取り組みも続けています。その実行こそがマチの幸せを願うグループ理念につながります。ローソンでは2019年度からSDGs委員会を立ち上げ、事業活動において社会課題の解決につながる提案を行い、実行に移しています。例えば、事業活動に大きな影響を与える気候変動リスクに関し、分析と情報開示を求める「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を2020年4月に実施しました。現在は、気候変動がもたらす影響に関する分析と情報開示の準備を進めているところです。

 私は先頃、手紙をくださった14歳の女性とお話ししました。「コンビニエンスストアはなぜプラスチックであふれているのですか」というご指摘です。私たちが行っている削減策をお伝えしましたが、それらはまだ極めて一部の取り組みに過ぎず、これからの地球で生きていく世代にとって、プラスチック削減は切実な問題であることを痛感しました。次世代への責任を果たすには、旧来の常識からの発想だけでは足りません。環境負荷を減らすために、常識を越えて、一層注力していかなければと思っています。

 もう一つ、私たちローソンの考え方としてお伝えしておきたい大切なことがあります。

 それはローカライズということです。日本全国一律の品揃えをし、どこでも24時間営業という、旧来の平準化されたコンビニエンスストアのビジネスモデルは、すでに過去のものとなっています。

 例えば秋田の店舗では、地元の農業高校の生徒さんたちと地元の食材を使い一緒につくったベーカリーが買えます。福岡のローソン店舗では、「はかた地どり」を使用したその地域にしかないおにぎりが買える。全国を見れば、マチそれぞれに文化も価値観も、また生活様式も違うのは当り前。だからお店のあり方や品揃えも違っていい。そうした多様性を、私はとても素敵なことだと思います。一方、東京でしか買えなかった有名店が監修する商品を全国のローソンで買えることにも価値があります。「その場所だけ」「全国どこでも」どちらも大切ですが、そのバランスを取るため、加盟店オーナーの方々の意見に耳を傾けるのも私たち本部が担うべき役割です。地域特性を生かした個店重視の多様化対応は、今後もさらに進めていくべきことです。ローカライズと、それを支えるデジタル技術。その融合を実現していくことは、今後の成長に向けての大きなカギになると思っています。

 例えば秋田の店舗では、地元の農業高校の生徒さんたちと地元の食材を使い一緒につくったベーカリーが買えます。福岡のローソン店舗では、「はかた地どり」を使用したその地域にしかないおにぎりが買える。全国を見れば、マチそれぞれに文化も価値観も、また生活様式も違うのは当り前。だからお店のあり方や品揃えも違っていい。そうした多様性を、私はとても素敵なことだと思います。一方、東京でしか買えなかった有名店が監修する商品を全国のローソンで買えることにも価値があります。「その場所だけ」「全国どこでも」どちらも大切ですが、そのバランスを取るため、加盟店オーナーの方々の意見に耳を傾けるのも私たち本部が担うべき役割です。地域特性を生かした個店重視の多様化対応は、今後もさらに進めていくべきことです。ローカライズと、それを支えるデジタル技術。その融合を実現していくことは、今後の成長に向けての大きなカギになると思っています。

全加盟店との共存共栄に向けた多彩な取り組みを進めています

 ローソンはさまざまな新しい取り組みを進めています。

 エンタテインメント関連事業への注力や、ナチュラルローソンやローソンストア100、成城石井などグループ事業への展開もその一環で、コロナ禍以降の新しい需要に応える商品強化も進めています。

 今年5月からはKDDIの展開するauのポイントプログラム「au WALLETポイント」と共通ポイントプログラム「Ponta(ポンタ)」のポイントが統合されました。統合による会員基盤1億超のデータを活用することで消費動向の予測もよりスムーズになり、魅力ある商品開発などに生かしていけます。また、働き手不足問題を解消するためには、ローソンス タッフ株式会社を通した支援やデジタルを活用した無人店舗実験も変わらず進めていきます。

 これからの新しいコンビニエンスストアのあり方を考えれば、マチの立地によって、人と人との親しい交流の場、デジタル技術を駆使した都心部の無人24時間店舗などといった二極化が生じることも想定されますが、私たちはこれまでに積み重ねてきた多くの対策と、各加盟店オーナーとの協調により、そのどちらの道においても前進していけると確信しています。

三菱商事がもつリソースを今後も最大限に生かします

 最後になりますが、事業パートナーである三菱商事の支援が、ローソンにとって大変価値のあるものになっていることをお伝えします。海外での店舗展開、原材料調達、GODIVAなどのブランドとのコラボレーションなどは、三菱商事の力を大いに活用しています。安定した強い物流や製造拠点、海外ネットワークなどは、ローソンを背後から支えている存在です。それをどう戦略的に生かし、個店への利益につなげるかはフロントに立っている私たち本部が考えていく部分です。私たちは今後も上場企業としての独立性を保ちつつ、三菱商事グループとのパートナーシップを効果的に活用し、そのリソースを最大限に生かして、すべてのお客さまレコメンドNo.1と加盟店の利益向上へと結びつけていきます。

 世界各地であらゆる人々、業態が苦難を強いられる2020年度の幕開けでした。しかし、やるべきことに果敢に取り組み続ける意義も目に見えやすくなっているのかも知れません。この社会の変容を一つの大きな機会とし、アフターコロナに向けて私たちローソンは今こそ為すべきことすべてに取り組んでいきます。グループ全体を通した行動の蓄積は、やがて振り返れば大変革とも言えるものになるでしょう。その一つひとつが「新しいコンビニエンスストアのあり方」に結びつくはずです。

 私たちは挑戦を続けます。