ジブリ美術館 ジブリ美術館

マンスリーレポート

三鷹の森ジブリ美術館 2020年4月 マンスリーレポート

スペシャルインタビュー!画家・井上直久さんとジブリ美術館

 昨年11月から始まった企画展示『手描き、ひらめき、おもいつき』展では、ジブリ美術館がつくられた経緯やこれまでの企画展示の制作の過程を、宮崎駿監督が描いた絵や文章を中心に紹介している。そこで今回は、映画「耳をすませば」の挿話で美術制作を担当し、ジブリ美術館ともかかわりの深い画家の井上直久さんのインタビューをお届け!館内の壁画「上昇気流II」の制作秘話や、美術館オリジナル短編映画『星をかった日』の原作を手掛けた経緯などについて伺った。

イノウエ

イノウエ ナオヒサ
‘48年大阪生まれ。高校の美術教諭として働く傍ら、「イバラード」と名づけられた作品を描き続ける。
92年からは画家としての制作活動に専念。以後国内外で様々な展覧会を開催している。スタジオジブリでは94年、に映画「耳をすませば」の1シーン「バロンのくれた物語」の美術を担当。02年にはジブリ美術館中央ホールに壁画「上昇気流2」他制作。

お客さんといろんな話をしながら開館中の館内で壁画を描きました

 初めて美術館に来たときは、「住むのに気持ちよさそうなところだな」と思いました。中庭には井戸があってカフェもあって、絵を描くのに疲れたら館内を散歩しても楽しそうだし。宮崎さんに話したら、「それなら美術館の前に小さな小屋を建てるから、そこから通えばいいじゃないですか」とすごく具体的な話をされました(笑)
 館内の壁画を描かせてもらったのですが、 壁に直接描くというのは初めての経験でしたし、塗り替えるときに困るので普通はあまりしません。それを新築の美術館で許してくれるのが宮崎さんの面白いところですね。壁画は開館中の館内で制作したので、自分自身が美術館の展示物になったつもりで、作業台の上に椅子を置いて「話しかけても大丈夫です」と書いた紙を貼りました。そうするとお客さんが話しかけてくれて、息子さんの進路相談をされたこともありましたし、子どものなかには僕の絵の具を指にとって壁につけたりする子もいて(笑)。慌てて上から同じ色の絵の具で塗り消しましたが、宮崎さんはお構いなしの様子で「そんなのいいんですよ。もっといつも絵を描いているときみたいに『パシャン、パシャン』と絵の具を壁にまきちらしてください」と言われました。
「星をかった日」の話をしたのもそのときなんです。お客さんが帰った後に世間話をしていて、「実はいま描きかけている絵本があるんです。女の子が星を育てて、そこに畑を作って住む話で…」と言った途端、宮崎さんが「それはどういう話ですか、詳しく聞かせてください」と身を乗り出してきて。翌週美術館を訪れたら「井上さん、あの話映画にできますよ。原作を書いてください」と言われました。
 ほかにも中央ホールで2回、趣味の音楽演奏をさせてもらったり、良い思い出がたくさんあります。これからもジブリ美術館と一緒に、楽しいことができたらいいですね。

星をかった日

▲土星座上映作品「星をかった日」  © 2006 井上直久・Studio Ghibli

Photo/村上宗一郎
© Studio Ghibli © Museo d'Arte Ghibli

(月刊ローチケ4月号 掲載)


※過去のマンスリーレポートにて掲載の内容に関しまして、既に終了しているイベント・展示・メニューがあります。
予めご了承願います。

チケットは事前予約制。ご購入はローソン店内のLoppi、ローチケHMV(オンライン)から!

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