
ローソングループ(以下、グループ)は、豊かな地球の恵みを次世代へ引き継ぐため、常に自然環境及び地域社会に配慮した事業活動を行うとともに、地域社会との共生と持続可能な発展に向けて積極的に行動することを「環境方針」の基本理念として掲げています。
また、グループの重点課題(マテリアリティ)を決定するうえで、年々激化する気候変動問題についても非常に重要な項目の一つとしてとらえており、グループの中核会社である株式会社ローソン(以下、当社)は2020年4月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」※に賛同し、TCFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」に関する情報の開示を進めることにいたしました。
※TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(各国の金融関連省庁及び中央銀行からなる国際金融に関する監督業務を行う機関)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する情報の開示を推奨しています。
ガバナンス
当社は事業活動を通じて持続可能な社会の実現を目指し、2019年3月に代表取締役社長の直轄組織として役員以下、全本部長が委員として出席する「SDGs委員会」(年4回開催)を立ち上げました。同委員会では、“地球(マチ)への優しさ“を実現するため、「脱炭素社会への持続可能な環境保全活動」に取り組むことを宣言しております。そして、目標(KPI)の達成を目指して実施計画の策定と進捗管理を進めています。
SDGs委員会の配下には気候変動関連の情報開示を進めるワーキンググループを設置し、事業戦略を担う経営企画や経理の担当、IR担当、さらにはリスクを管理する部署が、TCFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」に関する情報の開示を進めることにいたしました。ワーキンググループにおいては気候に関するリスクと機会を分析するとともに、事業戦略への影響を把握して事業戦略の見直しや気候変動の緩和や適応につながるさまざまな対策を検討しております。そして検討した結果についても、このワーキンググループが中心になって情報開示を強化してまいります。
さらに、2021年3月1日より、CSO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー:最高サステナビリティ責任者)を設置し、代表取締役社長がこの任に就くこととなりました。加えて、同日より、専任部署としてSDGs推進部も設置し、新たな体制で取り組みをいっそう強化してまいります。

ワーキンググループの役割
- ●気候変動に関するリスクと機会の分析
- ●事業戦略への影響把握
- ●気候変動の緩和や適応につながる対策の検討
- ●気候変動関連の取り組みに関する情報開示
戦略
(1)リスク及び機会の特定
気候変動に伴うリスク及び機会には、GHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出に関する規制等の低炭素経済への「移行」に起因するものと、気象災害の激甚化等の気候変動による「物理的」変化に起因するものが考えられます。
当社では、これらのリスクや機会による影響の発現時期はそれぞれ異なると認識しており、短期(3年未満)、中期(3~10年未満)、長期(10年以上)の観点で以下の表のとおり整理しました。
主なリスク・機会 | 発現・実現時期 | ||
---|---|---|---|
移行リスク | 炭素価格の導入・引き上げ GHG排出規制強化 |
炭素価格の導入による店舗運営コストの増加 | 中期 |
炭素価格の導入による原材料調達コストや製造コストの増加 | 中期 | ||
電力価格の上昇 | 電力価格の上昇によるエネルギーコストの増加 | 中期 | |
電力価格の上昇による原材料調達コストや製造コストの増加 | 中期 | ||
フロン規制強化 | 店舗におけるノンフロン設備等への投資コストの増加 | 短期 | |
プラスチック規制強化 | プラスチック規制に対応した代替原材料の調達コストの増加 | 中期 | |
消費者のライフスタイル、好みの変化 | 環境配慮への遅れによる、ブランドイメージの低下 | 中期 | |
物理的リスク | 気象災害の激甚化 | 店舗の浸水等による被害、休業による売上の減少 | 短期 |
平均気温上昇 | 店舗、配送センターなどにおける電気使用量の増加 | 長期 | |
機会 | 炭素価格の導入・引き上げ | サプライヤーにおける業務プロセス・設備の効率化による原材料調達コストの減少 | 中期 |
物流の効率化による輸送コストの減少 | 中期 | ||
再生可能エネルギーの技術開発 | 低コスト化した太陽光発電の導入によるエネルギーコストの減少 | 長期 | |
消費者のライフスタイル、好みの変化 | 環境配慮型商品・サービスの開発による売上の増加 | 中期 | |
平均気温上昇 | 気温上昇による顧客の嗜好の変化に合わせた商品・サービスの開発による売上の増加 | 短期 |
(2)シナリオ分析
グループ全体を対象としてリスク・機会の事業への影響についてシナリオ分析を進めており、まずは分析の対象を以下のように設定してシナリオ分析に着手しています。
対象事業 | 国内コンビニエンスストア事業 |
---|---|
対象範囲 | 自社及びフランチャイズ店舗 |
対象期間 | 2030年、2050年 |
分析対象 |
・炭素価格の導入による店舗運営コストの増加、電力価格の上昇によるエネルギーコストの増加
・気象災害の激甚化による店舗への影響
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参照したシナリオ |
・IEA WEO 2019 SDS・STEPS(2℃)、CPS(4℃)
・IPCC第5次評価報告書 RCP2.6(2℃)、RCP8.5(4℃)
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炭素価格、エネルギーコスト
上記で分析対象とした自社及びフランチャイズ店舗においては、当社のGHG排出量の大半は電力に由来すると認識しています。よって、今後、気候変動の緩和に向けて、排出量に対して炭素価格が導入された場合、当社の電力調達に対して追加のコストが発生するため、電気使用量の削減等の自社の状況と調達する電力のCO2排出係数や価格の状況によって影響度は大きく左右されることが考えられます。
そこで、当社が重点課題として実施している省エネの取り組みを行う場合と、取り組まない場合において、今後の炭素価格や電力セクターの排出係数、電力価格の予測を加味し、シナリオ分析を行いました。また、当社がSDGs推進に向けた取り組みとして設定した「2050年の1店舗当たりのCO2排出量100%削減」を達成するために必要な再生可能エネルギーの調達コストについても分析を行いました。
その結果、2030年時点、2050年時点ともに、気温上昇を2℃に抑えるために炭素価格が1トンCO2当たり$100~140で導入された場合、電力セクターの排出係数が低炭素化により減少していくことを加味しても、当社が省エネに取り組まなければ、一定の財務的影響があることがわかりました。
一方、当社が省エネに取り組んだ場合、炭素価格の導入による店舗運営コストだけでなく電気料金も削減することができるため、財務的影響は許容できる範囲に抑えられることがわかりました。さらに、「2050年の1店舗当たりのCO2排出量100%削減」に向けては、省エネを推進するだけでなく再生可能エネルギーの調達をする必要があり、調達単価の高低によって、多少の影響額に差はあるものの、財務的影響は許容できる範囲に抑えられることがわかりました。
気象災害
グループとして、大規模な災害に備えることはもちろん、災害が発生したときには「マチのライフライン」としての役割を果たすために、FC加盟店・本部従業員の安否や被害状況を確認し、お取引先の商品供給状況の把握など、迅速に各種の災害対策を講じて被害店舗の早期復旧、営業再開(継続)を目指しています。
現在は、災害発生時にも営業継続と早期復旧ができる強い店舗網を構築していくことを目標に、気象災害の激甚化による店舗への影響評価を店舗別、地域別に進めております。分析の結果、2050年までは、2℃シナリオ、4℃シナリオのいずれにおいても洪水被害の増加による財務的影響は限定的であり、許容できる範囲であることがわかりました。一方で、地域別の分析結果においては、水害リスクの高い地域に店舗が存在しているケースも見られたため、今後、さらなる防災対策を検討してまいります。
(3)分析結果を踏まえた今後の方針・取り組み
このたび、当社では気候変動に関するリスクと機会を洗い出すとともに、2℃シナリオ及び4℃シナリオに基づき、事業への影響の分析を実施いたしました。この取り組みはまだ開始したばかりであり、今後さらに内容の充実、精査が必要であると考えております。
また、昨今の世界における気候変動問題に対する機運の高まりを受け、気候変動に関わる政策や法規制の制定等、世界及び日本の動きも大きく、かつ素早く変化してくるものと思われます。このような状況のもと、事業戦略の見直しや気候変動の緩和及び適応に資する対策を進めていくためにも、分析の精度を上げるように努めてまいります。そして、その分析結果を開示することにより、ステークホルダーの皆さまの要請にお応えしてまいりたいと存じます。
指標及び目標
当社は、2019年度に社会課題・情勢等に鑑み、2030年の社会環境面に関わる目標(KPI)を設定し、達成に向けて取り組んでいます。さらに、脱炭素社会の形成及びSDGsが目指す姿に貢献すべく、環境ビジョン「Lawson Blue Challenge 2050! ~“青い地球”を維持するために!~」としてより高い目標(CO2排出量削減、食品ロス削減、プラスチック削減)にチャレンジしています。
目標(KPI)
CO2排出量削減
2030年
1店舗当たりのCO2排出量を
2013年比 50%削減
(2021年6月に目標を上方修正)
2050年
食品ロス削減
2030年
食品ロスを2018年対比
50%削減
2050年
プラスチック削減
2030年
容器包装プラスチック使用量を
2017年対比 30%削減
オリジナル商品の容器包装
プラスチックにおいて
環境配慮型素材を 50%使用
2030年
プラスチック製レジ袋を 100%削減
2050年
オリジナル商品の容器包装
プラスチックにおいて
環境配慮型素材を 100%使用